アブデル・ラハマン・エル=バシャ(ピアノ)

アブデル・ラハマン・エル=バシャは1978年6月ベルギー・エリザベート王妃国際コンクールで審査員全員一致の票決により優勝を飾るとともに、聴衆賞も獲得した。これはエル=バシャ19歳の時であった。
 1958年10月、ベイルートの音楽一家に生まれ、有名な画家を叔父にもつエル=バシャは、1967年マルグリット・ロンとジャック・フェヴリールの弟子だったズヴァルト・サルキサイアンについてピアノのレッスンを始めた。10歳のとき、オーケストラと共演して初のコンサートを開いた。1973年クラウディオ・アラウが「輝かしい未来を持つ青年だ」と予言し、1974年にはフランス、旧ソ連、英国から奨学金の申し出を受けた。エル=バシャは文化的な親近感からフランスの好意を受けることにし、パリ音楽院に入学、ピエール・サンカンのクラスに入った。卒業時には4科目(ピアノ、室内楽、和声学、対位法)で第1位を獲得した。
  エリザベート・コンクールの優勝後エル=バシャは国際的な活躍を期待されたが、さらに研究を深めレパートリーを増やすべく勉強に没頭した。この頃から音楽紙はエル=バシャをこれまでの偉大なピアニストに匹敵する音楽家として取り上げ始めた。とくに威厳にあふれ、明快さ、優れたテクニックを持ち、しかも静穏な演奏は、感情の根底に迫ると言うのがそれらの内容だった。
現在では、ザルツブルク・モーツァルテウムからパリ・シャンゼリゼ劇場まで、ベルリン・フィルハーモニーからアムステルダム・コンセルトヘボウまでヨーロッパのどこにもエル・バシャの姿はあり、更に日本、中東、アメリカでも活躍している。エル=バシャは50曲を超える膨大な協奏曲のレパートリーをもち、それはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、シューベルト、シューマン、ラフマニノフ、ラヴェル、プロコフィエフらの作品を網羅する。
 共演する指揮者も、セルジュ・ボド、エリアフ・インバル、エマニュエル・クリヴィヌ、クルト・マズア、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキら錚々たる顔ぶれ、オーケストラもベルリン・フィル、パリ管、ロイヤル・フィル、N響、コンセルトヘボウ室内管、スイス・ロマンド管が共演している。1983年エル・バシャ初のレコーディング、プロコフィエフ初期作品集がACCレコード大賞グランプリを獲得したが、この賞はプロコフィエフ未亡人から直接手渡された。
 フォルラーヌ・レコードには、バッハの協奏曲3曲、ラヴェルの2つの協奏曲、シューマン、ラヴェル、シューベルトの作品を録音している。ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ全曲」のレコーディングは、コンサート同様、批評家から「大きな出来事」として絶賛を浴びた。この全曲盤CDはラヴェル曲集とともに「フランス・ディスク大賞グランプリ」を獲得した。バッカは現在ショパンのピアノ作品全曲の年代順録音を進めている。エル=バシャはまた作曲家でもある。
 1981年フランス、レバノン両国から2重国籍を与えられた。現在パリ近郊に住んでいる。

堀米 ゆず子 (ヴァイオリン)
YUZUKO  HORIGOME, Violin

4歳よりピアノを始め、5歳よりヴァイオリンを久保田良作氏のもとで始める。
1975年より江藤俊哉氏に師事。1980年桐朋学園大学音楽科を卒業。
1980年、ベルギー・ブリュッセルにおけるエリーザベト王妃国際音楽コンクールで、日本人として初めて優勝。その結果、一躍注目を集めヨーロッパを中心に世界各地からオーケストラとの共演、リサイタルなどの招待を受け、はやばやと一流演奏家の仲間入りを果たした。
これまでにベルリン・フィル、ロンドン響、ウィーン響、ミラノ・スカラ・フィル、アムステルダム・コンセルトヘボウ管、フィラデルフィア管、ロサンジェルス・フィル、モントリオール響、シカゴ響、ニューヨーク・フィル、ボストン響など世界有数のオーケストラと共演、またエーリヒ・ラインスドルフ、アダム・フィッシャー、クラウディオ・アバド、小澤征爾、アンドレ・プレヴィン、サイモン・ラトル、リッカルド・シャイー、シャルル・デュトワ、マイケル・ティルソン・トーマスら著名指揮者に数多く招かれ共演している。
ソリストとしての活躍に加え、室内楽にも積極的に取り組み、アメリカのマールボロ音楽祭やクレーメルの主宰する"ロッケンハウス音楽祭"にしばしば参加。さらに1990年からは、カザルスホールのレジデント・クァルテットである"カザルスホール・クァルテット"のオリジナル・メンバーとしても活躍した。最近ではヨーロッパの音楽家仲間と「アンサンブル・コンソナンス(共鳴)」を結成、ヨーロッパ各地で演奏活動を展開している。
1993年、2001年にはエリーザベト王妃国際音楽コンクールの審査員を務めた。
1996年には、サントリーホール10周年を記念して作曲された湯浅譲二のヴァイオリン協奏曲「イン・メモリー・オブ 武満徹」を世界初演したほか、武満徹、三善晃など日本人作曲家の作品の演奏には定評があり、そのうちのいくつかはCDとしても発売されている。
近年ではマルタ・アルゲリッチとの世界各地での共演(イタリア、日本、アルゼンチン)、アシュケナージ指揮チェコ・フィル、ヤーノシュ・シュタルケル、サンクトペテルブルグでのサンクトペテルブルグ響との共演ほか、2003年〜2006年の4年に亘り日本とヨーロッパでピアノの児玉桃とモーツァルトのヴァイオリンソナタ選集のコンサートをなどが高い評価を得ている。
2006年から2010年まで5年にわたり、毎回現代日本人作曲家の新作を含むヴァイオリンの魅力を存分に引き出したプログラムで綴る「堀米ゆず子ヴァイオリンワークス“音楽の旅−叙情を求めて”」を展開、その演奏はライブレコーディングとして毎年発売されている。2007年からは3年にわたりピアノのアブデル・ラーマン・エル=バシャとベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全曲演奏会を行うなどシリーズ企画にも積極的に取り組み、好評を博している。
2008年春には、フランスにてニース交響楽団とラロのヴァイオリン協奏曲全3曲他のレコーディング、6月にはルガーノアルゲリッチ音楽祭(スイス)、9月にはフランダース音楽祭(ベルギー)へ出演した。また秋にはシャンドール・ヴェーグ指揮カメラータ・ザルツブルク室内管弦楽団とのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集が2枚組のCDとして生まれ変わり話題を呼んでいる。
 また1995年には初の書き下ろしエッセイ「モルト・カンタービレ」(NTT出版)を出版、多彩な才能を披露している。
現在、ブリュッセル王立音楽院客員教授。2008年からはJTアートホールのプランナーを務めている。
使用楽器は、ヨゼフ・グァルネリ・デル・ジェス(1741年製)。
公式ホームページ:http://www.palp.com/yuzukohorigome/ (2008年12月現在)
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